提案最終審査 総評
今回8回目を迎えた東京ビジネスデザインアワードにおいては、審査委員一同、年々提案のレベルが上がってきていると感じていましたが、今回はそれを更に上回り、過去最高にレベルの高い提案が集まった素晴らしいものとなりました。9組すべての提案が上位の賞を受賞するに値するもので、審査委員も正直なところ選ぶのに苦慮したほどでした。
最優秀賞の「新規培養技術による『酒づくりイノベーション』」は、受賞企業の持つ技術のイノベーティブな部分を、デザインを通じ、さらに上のレベルに昇華させたことが大きな評価となりました。デザインには、「人の心を幸せにする、豊かにする、生活が変わる」という力があります。本来、人と分離して存在していた技術は、デザインにより「人の心や生活にフィットし」そこから「イノベーティブの価値」は花開くのではないかと思います。今回の提案は受賞企業の技術を花開かせるような、奇想天外なアイデアであると思われました。優秀賞の「 『段ボール加工技術』から生み出す明かりの防災プロダクト」では、企業の持つ理念と社会的な課題解決というテーマを高レベルのアウトプットに繋げた点に加え、「被災者の心を和らげる」というデザインならではの役目を表現した点が素晴らしいと感じました。もう一つの優秀賞の「ものづくりをアップデートする新サービスの提案」は、アプリケーションという新しいジャンルが新鮮であり、想定ユーザーもパソコンが得意ではなくスマホが得意な方などを含めて考えられ、見えない市場に対するポテンシャルも感じられました。
2018年に経済産業省・特許庁により「デザイン経営」宣言が出されましたが、2012年から行っている東京ビジネスデザインアワードで実践してきたのは、まさにその考え方そのものです。本アワードを通じて、中小企業にもデザイン経営が入ってきており、そこでデザイナーは単なるモノのデザインに留まらず、企業活動のより根幹の部分、例えば経営や収益体制を変えるといった一段上の価値あるデザインを行っているという点を今後も伝えていきたいと思っています。
2019年度 東京ビジネスデザインアワード審査委員長 廣田尚子
2019年度
東京ビジネスデザインアワード
審査委員長 廣田尚子
審査委員長挨拶
先が読めない今の時代を切り拓くためには、企業にはデザインが必要だという意識が高まる中、昨年デザイン経営宣言が発表されました。デザインが製品開発だけでなく企業の経営構想を築く力になることに、思いを新たにした経営者の方も多いと察しています。東京ビジネスデザインアワードでは、中小企業が活用するデザインは商品に限らずビジネス全体を描く戦略が重要だと提唱してきました。7年前の立ち上げ当初から、その考えに賛同した多くの企業とデザイナーの協業が生まれ、質の高い取り組みに対する社会の関心も年を追うごとに高まってきました。東京ビジネスデザインアワードが行う活動は、デザイン経営宣言の一部分に過ぎませんが、ここで繰り広げられる協業プロセスには、企業の価値を変える深く熱いストーリーと、数字だけにとどまらない素晴らしい成果がたくさんありました。今振り返ると、これまでご参加くださった企業とデザイナーの皆様は、それまでは言語化されていないけれど時代が求めているデザインと経営の要素を、いち早く感じ取ってご応募くださいました。改めて感慨深く感謝しております。
2019年1月に行われた昨年度の最終成果審査会では、完成度の高い提案内容に審査委員一同、驚きと感銘を受けました。当日会場にいた多くの来場者は、デザイナーと企業が一体となってビジョンと戦略を描いているという、確固たるアピールをプレゼンテーションから感じ取られたと思います。受賞チーム全体に目的意識の高まりが溢れていました。ビジネスデザインアワード事務局では、参加される方々の可能性を広げ、満足と質の向上を目指して、毎年新しい取り組みにチャレンジするクリエイティブなマネジメントを実践しています。令和元年となる2019年度も、東京から「心を豊かにする新しいビジネス」が生まれるよう、たくさんのご応募をお待ちしております。
2019年度 東京ビジネスデザインアワード審査委員長 廣田尚子
2019年度
東京ビジネスデザインアワード
審査委員長 廣田尚子