私たちは4年にわたり商品開発の裏側を見つめてきました。そこから開発プロジェクトの成功と失敗を決める重要なポイントを掴みました。デザイナーと企業による、開発チームの信頼と活気が成功の鍵を握っているのです。開発の現場には、デザインの導入によってプロセスに多くの変化がもたらされます。これまでにない市場を開拓するには、過去に事例のない別業態との取り組みや先が読めない中での先行投資など、企業には多くの決断が求められます。その中で新しい考え方を取り入れて自社の価値を再発見し、トータルなビジネス感覚を身につけた企業は、トラブルを回避して成功を掴んでいます。新しいことへ踏み出しチャレンジする情熱が、チームを束ねる信頼感の基となるのです。 また東京ビジネスデザインアワードでは、デザイナーにも開発プロセスの重要性を提案しています。商品開発を初めて経験する企業の人々の魅力を引き出し、商品をアウトプットするドライブ力、つまりマネジメントはプロのデザイナーとして重要な能力の一つです。応募したデザインを実現するためには、企業とデザイン双方の力を出し切れる信頼関係を築き、真摯に先導する仕事が求められます。デザインはものからコトへ。プロセスにこそデザインの力が求められると言っても過言ではありません。東京ビジネスデザインアワードでは、アウトプットまでのプロセスを多面的にサポートしてビジネスの成功を目指します。
2016年度 東京ビジネスデザインアワード審査委員長
廣田尚子