審査委員長挨拶
2012年に始まった東京ビジネスデザインアワードも、昨年度で干支も一回りし、今年度、13年目となる開催を迎える運びとなりました。
この期間、私たちの生きる世界は過去に類を見ないほどの早さで、流動的に変化を続けてきました。何が正解なのか予測することは非常に困難で、改めて世の中とはとても複雑であることを実感する日々が続いています。
コロナ禍の3年間を経て、日本国内ではいよいよ「働くこと」、さらには「人」にまつわる課題が顕在化する時期に差しかかってきました。物流にまつわる2024年問題、労働力人口の減少が本格的に始まる2025年問題、2030年、40年とこの問題はさらに加速していくことになります。
戦後、高度経済成長期からバブル期までは、主に工業・ものづくりにおける「技術」と、その生産効率に応じた人々の働きが、企業を支えてきました。そして技術では差別化が難しくなった昨今、「デザイン」を経営資産として活用する「デザイン経営」が注目され、国も推進をしています。
企業の経営者が「デザイン」を理解すること、そして、デザイナーが企業の「経営」を理解して、1つのチームとなり新たな事業を興すこと。それこそが東京ビジネスデザインアワードの主眼であり、今年度も変わることはありません。
日本における中小企業の割合は実に99.7%、従業者数も全体の7割を占めます。企業も法人。人格を与えられた組織です。この国の首都であり、また、時代の写し鏡とも言える東京という土地から、人と人とが出会い、双方の複雑さを理解した上で、一体となりともに働くことで、新たな明るい未来を創出する機会となることを、今年も心より願っています。
最後に、私自身は2013年より、途中お休みを挟みながら審査委員を務め、2021年度より審査委員長を拝命しておりましたが、2024年度は、審査を務める最終年度と位置付け、引き続き身に余る大役を務めさせていただきます。委員就任中は、数多くの企業の経営者とデザイナーとの出会いを見届けてきました。最後となる今年も、そんな素晴らしい人と人との出会いを期待しています。
2024年度 東京ビジネスデザインアワード審査委員長 山田 遊
2024年度
東京ビジネスデザインアワード
審査委員長 山田 遊