審査委員長挨拶
コロナ禍の最中である2021年に東京ビジネスデザインアワードの審査委員長に就任して以来、今年で3年目の節目となりました。昨年、海外で勃発した戦争は、現地では今もまだ続いています。一方で日本国内では、ようやくウイルスと共存しながら過ごす日常を迎えており、今、振り返ってみれば、この3年間で、私たちが今生きる世界は、これまでのどの時代よりも急速に変化し続けている、という事実を改めて強く認識する機会になったと感じています。
社会のニーズが常に変わり続けているからこそ、ブロックチェーン、NFT、メタバースに代表されるようなWEB3、また、最近大きな話題となっている生成AIの発展など、デジタルを中心とした新たな技術や手法が次々と登場することで、幸か不幸か、企業活動はもちろん、私たち自身も常に変化し続けることが求められている時代と言えるでしょう。
国内の人口減少や低成長といった課題を抱えながら、環境問題や社会的多様性に配慮し、適切に対応していく。その上で、常に移ろい続けていく顧客のニーズを満たし、共感を得ることが、大小問わず企業活動の継続にとって重要な鍵となることでしょう。そして、それはとても困難なことであるかのように思えます。
そもそも、現代のビジネスは複合的で様々な要素から成り立っており、戦略的で綿密なデザインが必要とされているにも関わらず、産業化とそれに伴う資本主義の発展と共に、いつの間にか事業とデザインが分化され、あたかも全く異なる領域として扱われるようになりました。
12年目となる東京ビジネスデザインデザインアワードは、今こそまた企業とデザイナーが一体となって、ビジネスを共創する機会を提供することで、困難を打破し、変化する時代の先駆けとなるような萌芽を見届ける役割を果たしていきたいと考えています。私たちにとっても学びの機会となり、着想を得るきっかけとなるような事例が、今年もこの場所から産まれることを強く願っています。
2023年度 東京ビジネスデザインアワード審査委員長 山田 遊
2023年度
東京ビジネスデザインアワード
審査委員長 山田 遊