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医療器械職人の手加工技術

株式会社マイステック

アピールポイント

● 人の命を預かる医師の手の代わりとなる手術器械を作る技術。
● 機械加工では作りえない切れ味や使い勝手の良さ、金属に靭性を持たせる技術。
● 新たな手術手技を実現させるためにもなくせない技術。

テーマ概要

医療器械職人とは、幕末に職を失った刀鍛冶がメスやはさみ、鉗子など外科医が手に持って操作する手術器械を製造したことから始まりました。手術器械は手術部位・患者の体格・医師の好みによって多くの種類が必要となり一種類の製造数が少ないことから手加工による製造が一般的です。手加工(手仕上げ)とは、鍛冶屋が金属の棒材などから大まかな形に加工した材料を、やすりとハンマーを使い、最終的な形に仕上げたり、刃をつけたりする技術のことです。手加工で仕上げた製品は鍍金屋が表面仕上げを行ったあと、再度、職人が最終調整を行い完成させます。機械加工では対応の難しい少量のカスタムメイドが可能な点や、切れ味や金属に靭性を持たせる技術などに特徴があります。

特許・受賞歴・実績・クチコミ

医療器械職人の中には東京マイスター(都知事賞)の受賞者がいます。

Q.自社ならではの強み、他社との違いは?

現在、この技術は職人の高齢化と後継者不足により存続が危ぶまれています。現在では現役の職人は60人ほどでそのほとんどが70代、80代の高齢者です。職人の廃業によりいくつもの手術器械が供給不能になる事態も発生しています。その中で当社は若手職人の育成を目的に共同工場を立ち上げました。これは他社が行っていない新たな手法であり、この技術の維持と進化をプラットフォームに新しい手術器械の製品化に取り組んでいます。

Q.いま抱えている課題は?目指していることは?

この技術の認知度があまりにも低いことが課題です。重要な技術であるにもかかわらず、昔からの低価格が続いてしまったことも後継者ができなかった理由の一つです。また、多くのユーザー(医師や看護師)は、自分達が使う道具が職人たちによる手仕上げで作られていることを知らない方もたくさんいらっしゃいます。この技術の価値を知らしめることで、価値に見合った価格で販売できるようになることを目指しています。

Q.提案に期待していることは?

この技術の価値と職業の意義を多くの人に知ってもらうお手伝いをお願いします。また昔ながらの手術器械を見直し、現代のユーザーに選んでもらえるような製品としてカッコよくするアイデアを下さい。一方で医療現場で使われる器械のいくつかを、医療従事者以外の消費者に対する製品展開ができれば良いと思っています。ペット用なども良いかもしれません。

Q.デザイナーとの協業に期待していることは?

手術器械製造のコア技術は昔ながらの手仕上げ技術と考えておりますが、これを将来に向けて進化させるためのアイデアを一緒に考えていただきたいと思っています。若い職人たちともディスカッションしていただき、やりがいのある職業として仲間を増やしたり、新しいタイプの手術器械(製品)を開発したりすることを楽しみにしています。

審査委員よりコメント

メスやはさみ、鉗子などの医療器械の制作技術を次世代に残したい、と強い想いを持つ企業。技術を生かした製品提案だけはなく、市場の再生や後継者育成に繋がるようなアイデアを幅広く求めている。挑戦的な課題だけに、デザイナーからの全く新しい発想、斬新な提案に期待したい。

株式会社マイステック(北区)

2018年12月に設立したスタートアップ企業ですが、前身は創業105年の老舗医科器械メーカーからの独立です。代表は30年間多くの外科医と製品を開発してきた実績を持ちます。

https://meistec.co.jp/

社風

代表は59歳のベテラン営業マンです。共同工場で働くのは20代~40代の若手職人です。

自社製品・技術を通して、または企業として、社会で果たすべき使命(ミッション)や提供する価値など

患者さんのための製品を作ります。日本のものづくり技術を活かした手術器械開発に取り組み、国産品の価値向上や普及を目指します。やりがいのある職業を広く紹介することで医療器械職人の成り手を増やします。

今後の夢や目標、将来構想など

当社の共同工場(ITABASHI Co-working factory produced by Meistec)を作り手と使い手(外科医や看護師)が出会う場にすることを目指します。両者が出会うことで、患者さんの健康や命を守ることができる製品が生み出されるような場所になることを願っています。“医療”をキーワードに様々なモノづくりの人材が集まることで、イノベーティブな国産医療機器を製品化できたらと考えています。

テーマ企業プレゼンテーション

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